あらすじ
灯篭流しの盆の夜。
静かな海のほとりの、小さな防波堤で、
ゆっくりと沖へ流れていく、幾つもの灯籠を眺める少女、ゆい。
ゆいは、波打ち際に何かぷかぷかと浮かぶものを見つける。
それは涼しげな金魚鉢に飾るような、陶器のような大きな浮き球だった。
だがその中には、見たことのない不思議な海の生き物の影が、
ゆらゆらと現れては消えるのだった。
ゆいはその浮き球をとても気に入り、拾い上げると、
お母さんの待っている団地へと走っていく。
すると浮き球の影は、次々と外へ漏れ出し、
太古のサメの祖先、ノコギリのような歯をもった
魚竜などに姿を変え、黒い大きな影となって、
悠々と夜の街へと泳いでいくのだった。
そのゆいの後ろに。
ゆいを追う、振袖姿の少女の影
闇長姫の姿があった。