本作のストーリーのテーマのひとつ、描きたかったもののひとつに自分の足で生きる強さというものがあるんだ
えっ どういうことなの?
まずゆいとコトだが、ゆいは物語の時点では両親を亡くしている。だが、親からもらった自分の足があれば、一人でどこへでも行ける強さの象徴として描かれている。冒頭でも、山ひとつ越えて一人でお祭りの屋台を見にいってるし、崖から転がり落ちてもぴんぴんしてるしな。
ゆいの3Dモデルも、その点を意識して走りやすそうな服装にしている。
むっちりした足だな
一方コトは、「腐敗した世の中を変えたくて、努力して警察官僚にのし上がったものの、気づけば自分の足も腐ってしまった」「自分には助けるような価値なんてない」と、自分自身の行いを悔やんでいる。かつては自分の足で強く走っていたが、残酷な大人の世界に直面して、それでも順応して必死に生きていこうと、自ら変わることを決意したキャラクターだ。
もともと鬼なので腕っぷしも強かったが、ゆいと合った時点での姿は、まるで走ることを想定していない厚底の下駄、洒落た服や、細くて立てない足など、外見に弱々しさがある。「中央のエリート官僚になってからは、高飛車に振舞ってました」的な、鬼の気質とは合わない時期もあったのかもしれない。
ゆいに金魚鉢に入れて運んでもらわなきゃ、移動もできないからね
一方で警察兵たちもそうだ。いかつい鎧とでかい図体だが、本編ではパトカーやヘリが登場しており、基本こいつらは乗り物に頼らないと移動できない存在なんだ。
「ゆいが警察兵たちの脛(すね)を蹴ったら、全員うずくまって倒れた」とコトが驚くシーンがあるが、そういった描写にも、自分の足でどこまでも行ける、しっかりした足をもったゆいの強さと、汚職や不文律まみれの警察組織の中で、いつしか「自分の足で立つことを忘れてしまった」警察兵たちの対比を示している。
ひ弱な連中だなあ
それと、まだ本編で登場したばかりだが、もう一人警察組織に、ヒナという重要なキャラクターが出てくるんだ。
そいつは犠牲を払って、危険な「足」を何本も手にいれることで世界を変えようと、追い詰められた末に危ない道を選んでしまう。
足を手にいれる? タコみたいな?
タコにはならんが。つまり本作のキャラクターは、
自分の足で立って、どこへでも走っていけるゆい
と、それとは裏腹に
足が腐って立てないコト、
借りものの足(警察の肩書きや乗り物など)でしか立てない警察兵
借りちゃいけない奴から、危険な足を手に入れてしまうヒナ
という構図で俯瞰して見てみると面白いと思う。
なるほど。じゃあ、コトたち警察は、救いようのない悪いやつらなの?
いや、そうではないんだ。コトや警察兵たちも、かつては自分の足でしっかり立てていたはずで、コトを始めとして、
そもそも警察官になろうと思ったきっかけが、残酷な世界で弱いものを守れる存在になりたかったんじゃないかな。
たが、不文律やおかしな事ばかりの社会でお金を稼いで生きていくには、どうしても嘘をついたり妥協して生きていかなきゃならない部分がある。
そのあたり、次のコラムで述べるが、ゆいが持つ幼児性という点もからんでくるんだ。